note1100’s blog

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weight 2 level 11のカスプ形式

以下では, \(\Gamma=SL_2(\mathbb{Z}), P\Gamma:=PSL_2(\mathbb{Z})\)とし, \(G:=\Gamma_1(11), PG:=P\Gamma_1(11):=<-I_2>G/<-I_2>\subset P\Gamma\)とする.

\(S_2(G, \mathbb{C})\simeq H^0(X_1(11), \Omega^1)\)の次元は\(X_1(11)\)のgenus gであり, \(p:X_1(11)\rightarrow X_1(1)\simeq \mathbb{P}^1\)に対してHurwitzの公式を用いると

\(2g-2=[P\Gamma:PG]\cdot (-2)+\sum_{P:\text{ramification point}}(e_P-1)\)

を得る. ここで\(P\Gamma:PG]=[\Gamma:G]/2=\frac{1}{2}\cdot11^2(1-\frac{1}{11^2})=60\). 

pの分岐点 \(P\in X_1(11)\)は, \(p(P)\)のファイバーのサイズが\(60\)より真に小さいものである. このようなPは少なくとも\(p(P)\)が\(X_1(1)\)のカスプであるか, 楕円点であるかのいずれかである. 実際, いずれでもなければ\(P)\)に対応する上半平面の点への\(P\Gamma\)の作用の安定化群は自明で,これより\(p(P)\)のファイバーのサイズが60であることが簡単にわかる. 

\(p(P)=\infty\)の時, \(\sum_{P|\infty}(e_P-1)=(\sum_{P|\infty}e_P)-|cusp_G|=60-10=50.\)

ここで, \(cusp_G\)は\(X_1(11)\)のカスプ集合のことで, これは\(G\backslash \mathbb{P}^1(\mathbb{Q})\)に対応するので, サイズは\(11-1=10\).

 

\(p(P)\)が安定化群の位数2の点\(v_2\)の時, \(v_2\)の上の\(X_1(11)\)の点のサイズは\(60/2\)である. これは, \(G=\Gamma_1(11)\)がtorsion-freeであることから簡単に従う. よって, 上記と同様にして

\(\sum_{P|v_2}(e_P-1)=60-60/2=30\)

\(p(P)\)が安定加群の位数\(3\)の点\(v_3\)の時, 同様に

\(\sum_{P|v_3}(e_P-1)=60-60/3=120/3=40.\)

以上から, Hurwitzの公式に代入することで

\(2g-2=-2\cdot 60+50+30+40=-120+120=0\)

ゆえに, \(g=1\)であることがわかる. したがって, \(S_2(G, \mathbb{C})\)があるカスプ形式\(f=q+\sum_{n}a(n,f)q^n\)で生成されるベクトル空間であることと, 

\(X_1(11)\)が楕円曲線であることが分かった. 

この\(f\)の\(q\)展開係数\(a(n,f)\)を知るにはどうしたらよいか? \(11\)は素数で重さ2, weight 1のカスプ形式は存在しないので, \(f\)はNew formで, 正規化されたヘッケ固有形式である. よって, \(a(n,f)\)は ヘッケ関係式により\(a(p, f)\)の多項式で明示的に書けるので, 素数\(p\)に対して\(a(p,f)\)を計算すればいい. 次のことを示した. 

 

Claim: pが, 2, 11でないとする. この時

\(a(p,f)=-\sum_{x\in \mathbb{F}_p}(x-1,p)\cdot (x^3+x^2-3x-1,p)+1+\delta,\)

但し, \(\delta\)は\(x^3+x^2-3x-1\)の\(\mathbb{F}_p\)における解の個数である. これは, たとえば, (-11,p)=-1であれば\(\delta=1\)である. 

また, \((X, p)\)はルジャンドル記号とした. 

 

\(a(p,f)\)の計算をする方法は二つあって, 

1つ目: 楕円曲線\(X_1(11)\)の定義方程式を明示的に与え, それの\(\mathbb{F}_p\)-valued pointsのサイズを計算して導出する方法. 

2つ目: Jaquet-Langlands対応をつかって計算する方法. 

 

今回は1つ目の方法を用いて計算した. この計算は, Kubertの方法を使って簡単に行えるので書かない. 

 

具体的に様々なNで\(X_1(N)\)の定義方程式の計算をしたひともいる. 

math.mit.edu

 

2つ目の方法でも計算できるはずだが, まだ計算できていないので, 時間があるときに計算してみて, 比較したものをまとめてみたい. 

 

コンパクト向きづけ可能曲面の彩色

\(k\)色でn個の横一列に並んだ座席を, 隣接する座席は異なる色で彩色するパターンは\(k(k-1)^{n-1}\)通り存在する. これは, 閉区間Iというコンパクト多様体のn個の単体分割Dについて, 彩色パターンが\( k(k-1)^{n-1}\)であると考えることができる. 計量付きコンパクト向きづけ可能曲面Mは有限単体分割Dを持つことはよく知られる (例えば, 小木曽のコンパクトリーマン面の教科書を参照).

 Dを\(k\)色で, 隣接する面は異なる色で彩色したもの全体\( Col_D(k)\subset Map(D\rightarrow \{1,\ldots, k\} )\)とする. この集合に, 次の同値関係を入れる. 

\(x, y\in Col_D(k)\)が同値とは, ある等長同相写像\( \phi:M\rightarrow M\)で, \(\phi(D)=D\)を満たすもの, すなわち各\(D\)の単体に置換を引き起こすものが存在して, \(x\circ \phi=y:D\rightarrow \{1,\ldots, k\}\)を満たすことをいうとする. 

 この同値類で割った集合\( Col_{M,D}(k):=Col_D(k)/\sim\)のサイズはどうなるだろうか?

\(Aut(M)\)を等長同相写像全体とする.

\(G:=\{\phi\in Aut(M) \ |\ \phi(D)=D\}\)という群を考える. これは自然な準同型\(G\rightarrow Aut(D)\)を持つ.

以下では、(M,D)の条件として次を仮定する;

(Hyp)\(N:=\ker(G\rightarrow Aut(D))<G\)に対し, ある\(G\)の正規部分群列\(N_0=G>N_1>N_2>\ldots>N_{s-1}>N_s=N\)が存在して, \(N_i/N_{i+1}\)の位数が素数.

 

例えば、Gがアーベル群の場合はこの仮定が成り立つ。

 

次の主張を示そう. 

Claim; 上述の仮定を満たすM, Dに関して, ある多項式\( P_{M,D}(t)\in \mathbb{Q}[t]\)が存在して, 

\( |Col_{M,D}(k)|=P_{M,D}(k)\) が全てのkに対して成立する.

補足; 

この多項式は必ずしも整数係数ではない. 同値関係で割らない\(Col_D(k)\)のサイズに関する多項式は存在し(Dのサイズに関する帰納法から示せる)、彩色多項式と呼ぶ. 

証明のスケッチ;

\(G\rightarrow Aut(D)\)について, 

この像\(P\)は, 特に有限群である. \(P\)は\( X:=Col_{D}(k)\)に作用するので次の無縁和の分解を与えることができる. 

\(X=\cup_{x\in R}P\cdot x\)

但し, Rは代表類, 第一に, 次の等式を得る;

\( |X|=\sum_{x \in R} |P|/Stab(x)\)

彩色多項式の存在から, あるkによらない多項式\(P_D(t)\in Q[t]\)が存在して\(|X|=P_D(k)\)であった. 

Case 1; |P|が素数pの場合

\(Stab(x)\)の位数は1かpである. 安定化群の位数1,pのRの元全体をそれぞれ\(R_1,R_p\subset R\)とする. 先の等式から

\(P_D(k)=p|R_1|+|R_p|\)

をえる. \(R_p\)は, 全ての\(P\)の\(D\)上の軌道が同じ色で塗られるような彩色である. 

\(D\)の面を頂点とし, 隣接する面同士を辺でつなぐグラフ\( X_D\)とする. \(P\)は\(X_D\)に作用すると考えられる. \(P\)の, 各頂点における軌道を頂点全体\(V^{'}\)とし, それぞれの軌道上のいづれかの頂点同士が辺で結ばれるとき, \(\(V^{'}\)の辺とする. このようにしてできるグラフ\(X_{D_p}\)の彩色全体と\(R_p\)は1対1対応する. よって, \(|R_p|=P_{D_p}(k)\)という\(k\)によらない多項式\(P_{D,p}\)が存在する(これは\(X_{D_p}\)の彩色多項式).

 

以上から, \(|R_1|=(P_D(k)-P_{D_p}(k))/p\)であり,

\(|Col_{M,D}(k)|=|X/P|=|R_1|+|R_p|=\frac{1}{p}P_{D}(k)+(1-\frac{1}{p})P_{D_p}(k)\)

を得る. 

Case 2; 一般の場合

|P|が素数で割り切れる回数に関する帰納法を用いる. まず, 次の性質を仮定していた (これが外せるかどうかは分からない);

\(\ker(G\rightarrow Aut(D))<G\)に対し, ある\(G\)の正規部分群列\(N_0=G>N_1>N_2>\ldots>N_{s-1}>N_s=N\)が存在して, \(N_i/N_{i+1}\)の位数が素数. 

 

\(N_1\)で\(X\)を割った\(X/N_1=:Y\)のサイズは, 帰納法の仮定からある多項式\(Q(t)\)が存在して, \(|X/N_1|=Q(k)\)である.

\(Y\)を\(N_0/N_1=: N\)で割った位数を計算すればいい. Case 1とほとんど同様にして、あるkに依存しない多項式Pを用いて

\(|Y/N|=P(k)\)

と書けることが示せる。非自明なのは、\(Y\)への\(N\)作用の中で安定化群が\(N\)である点全体\(Z\)のサイズがあるkによらない多項式Qを用いてQ(k)とかけることである。

\(N\)の\(N_0\)における代表系\(S\)に対してStep 1と同様に構成したグラフ\(X_S\)には自然に\(N_1\)が作用する。\(X_S\)のk色彩色全体に\(N_1\)の作用の同値関係を入れたものと\(Z\)は1対1対応しており、帰納法の仮定から条件を満たす多項式\(Q(t)\)が存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機械学習の仕組み

まずパーセプトロンとは、w,v,sという実数によって

入力x,yに対しwx+vyがs以上なら1を出力しさもなくば0を出力する仮想端子のことである。(2個の実数w,vだけでなくn個の実数にしてもいい)

ニューラルネットワークとは、パーセプトロンを複雑に組み合わせて得られるネットワークである。例えばうまくパーセプトロンのパラメータを設定してやれば、and , or, Xor, Xandなどのgateをニューラルネットワークとして実現できる。

その際、パーセプトロンのw,v,sという数値を人力で一個一個決めていくことはない。ある目的に向けて最適なパラメータを自動的に設定していく仕組みが、機械学習というものであり、ここでは勾配法を解説したい。まず、パーセプトロンを滑らかにしたい。シグモイド関数\(F(x)=1/(e^{-x}+1)\)を用いて出力を

F(wx+vy-s)としたものを考える。

 

教師データ(s(1),...,s(n)), (t(1),...,t(n))という二つのデータが準備されているとする。これは1つのデータs(i)から与えられるべき出力に、1つのt(i)が対応する。パラメータXを設定した時によるデータs(i)の出力データp(i)としてt(i)とp(i)の二つのデータの差の二乗和F(X)とする。これを損失関数という。

F(X)が小さいほど良いパラメータ設定であり、少しずつ良いパラメータに近づけていく一つの方法が勾配法というものである。まず、あまりにも小さすぎず、大きすぎない正の実数\(\delta\)を人力で設定する。以下のアルゴリズムを適用する。

X=(x(1),...,x(m))としてパラメータを取り

grad(F)をFのgradientとする。

パラメータ値X_0に対し、\(X_1:=X_0-\delta \mathrm{grad}(F)\)とする。この操作を繰り返せば、だんだんF(X)は小さくなる。

例えば、grad(F)の成分で正なパラメータxにおいてxを負の方向に動かせばF(X)は小さくなる。このようにしてgrad(F)が十分0に近いところに達した時パラメータは変動しなくなり、Fの極小値になることが期待される。(微妙なのが、鞍点にいってしまう場合である。この場合極大でも極小でもないが動かなくなる) 

 

このようにして、学習率\(\delta\)を決めればパラメータを自動で設定できる。これが勾配法である。

具体的に画像認識に関して、教師データをもとにパラメータを設定していく上でF(X)をどう具体的に与えるかなどは

https://https://www.youtube.com/watch?v=xzzTYL90M8s

で解説されている。

 

 

アイゼンシュタイン級数の周辺

\( \Gamma \)を合同部分群とし, \( E(\Gamma) \)を重さが2でレベル\( \Gamma\)のアイゼンシュタイン級数全体とする。すなわち、

\( G_2(\Gamma)=S_2(\Gamma)\oplus E(\Gamma) \)

という、Peterson 内積による内積空間の分解がある。Hを上半平面とする。Cを複素数体とする。

E in \( E(\Gamma) \) に対し、a in Hを任意にとり

\( [E] \in H^1(\Gamma,C); \gamma \mapsto \int_a^{\gamma \cdot a} E(z)dz \)

とする。このコホモロジー類はaの取り方にはよらない。Yを, \( \Gamma\backslash H \)というアファインモジュラー曲線とし、XをそのSerre-Borelコンパクト化とする。

特異ホモロジーの標準射

\( H_1(Y, Z) \rightarrow H_1(X,Z) \)

は全射である。これはXとYのホミトピー型が一致しているので相対コホモロジー\(H_1(X,Y,Z)=0 \)であることによる。核をParとする。

他方、Gammaがtorsion freeであればその上半平面への作用は自由であり、Grothendieck SGA Tohokuなどでも書かれているが

\( H^1(\Gamma,C) \simeq H^1(Y,C) \)

である。よって、[E]は\(H^1(Y,C) \)の元である。キャップ積, すなわちサイクルに沿った積分を取ることで

\(\cap [E]: H_1(Y,Z) \rightarrow C\)

を得る。この像を, \(Period_E\)とする。同様にParに関して議論して、像を\(Residue_E\)とする。

\(A_E:=Period_E/Residue_E\)

としてアーベル群を定義する。Stevensはこれが有限であることを示した。

キャップ積により、Hom(H_1(X,Z), A_E)の元[E]が得られたが、これにより

\( \phi_E\in H^1(X, A_E) \)

というクラスを得た。ここで、Mazurの定義した、有限ディリクレ指標\(\phi \) に関するtwist cocycle \(c_\chi \in H_1(X,Z[\chi]) \)を導入しよう。

Cusp:=X-Yは\(P^1(Q)/\Gamma\)と対応する。

x, yをカスプの元とし、それらを結ぶ測地線によって

\( \{x,y\} \in H_1(X, cusp; Z) \)

という相対ホモロジー類を定義する。\(\chi\)の導手Nとして

\( c_\chi:= \sum_a\chi(a) \{i\infty, a/N \} \in H_1(X, cusp; Z[\chi]) \)

とする。以下、次の2点を仮定する。

1: \( \Gamma= \Gamma_1(M) \),

2: N>1, M, Nは互いに素。

すると、a/Nというカスプ点は\(i\infty\)と同値であることがわかる。このことから

\(c_\chi \in H_1(X, Z[\chi]) \)

を得る。Stevensは、\(\phi_E\)と\(c_\chi\)のキャップ積を具体的に計算し、これがEのq展開係数の初項と

L(E,1)を用いて記述できることを示したのである。

これは, Eとcusp formのmod p congruenceがL関数代数部分のmod p congruenceとどう関わるか?(Vatsal, Canonical periodの論文)という話や、Hecke環のEisenstein idealによる商の位数は?(Bergerなど)という問いを考える際に重要になってくる。

 

[E]について, これを一般の代数体Fに関するRes_{F/Q}GL_2に関し類似のものを作ることはHarderによってなされた。Hidaの\( GL_2 and GL_2 \times GL_2\)の論文の手法を用いればstevensの結果を拡張できるかもしれないが、虚二次体の場合を除いて現時点でこれをやっている人はまだいないように感じる。


Polylog的立場では、Kings, Huberなどがuniversal elliptic curve上のLog層という、pro-local systemに係数を持つドラームコホモロジー類である、ドラームポリログをtorsion切断に沿って引き戻すことで、modular curve上のEisenstein classを導入している。これはHarderのそれとは別物で、こちらはbase-changeに対してよく振る舞うという性質があり、それを用いたEisenstein classの非自明性は例えばLemmaなどが示している。CM楕円曲線上でドラームポリログを具体的に記述したり、楕円ポリログ関数を古典的なポリログ関数の拡張として導入する方向はBannai-Kobayashi-Tsujiなどに見られる。こちらをCMアーベル多様体に高次元化しようとすると、自然には同変ドラームポリログというものを考えることになり、虚二次体では出てこなかった単数群が厄介になるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

条件付き期待値

これまで、コロモゴロフ流の確率論に関する分布について見てきた。

ここでは、条件付き期待値について説明する。

以下、確率測度空間\( (X, C_X, P) \) を固定する。

また、確率変数として

\( x: (X, C_X) \rightarrow ( \mathbb{R}, B) \)

をボレル可測空間への可測関数を取る。

部分加法族 \( D \subset C_X \) を取り、Dに対する条件付き期待値E[x|D] を次のような2条件を満たす確率変数のこととする。

1、 \( E[x|D] :(X, D) \rightarrow ( \mathbb{R}, B ) \) が可測関数

2、 \( \int_A x(m) dP^x(m)=\int_{A} E[x|D](m) dP^x(m) \) が任意の \( A \in D \) で成立

 

2番目の左辺を\( \mu(A) \) のように定めれば、σ加法的関数をあたえ、\( dP^x \)によるラドン-ニコディム微分を考えれば上記のような条件付き期待値は必ず存在することがわかる。

 

少し簡単な状況として離散分布を扱うことで、これが古典的な条件付き確率と整合する概念であることが明確になる。

 

 

 

 

 

 

 

二項分布とPoisson分布, 正規分布

初めに二項分布とPoisson分布の説明をする. 

 

測度空間が\( \mathbb{N} \)とその部分集合全体, 確率測度Pとなる場合を考える. 

確率係数のべき級数

\( g(z):= \sum_{a=0}^\infty P(a) z^{a} \)

は前に「コルモゴロフ流の確率と分布」で説明した特性函数の類似であるが, これを用いることで簡明に期待値, 分散を求めることができる. 

 

定義から, 

\( E[x]= g^{'}(1), Ver[x]= g^{''}(1)+g^{'}(1)- (g^{'}(1))^2 \)

が成立する. 

前に説明した分布である, 二項分布の期待値と分散を計算する. そして正規分布といった連続分布の説明を行う. 

初めに,確率空間を\(  ( [1, 2, \ldots, n], C_n ), P ) \)で, \( C_n \)を部分集合全体とする. 

Pを, 

\( P( \{ k \} )=  _nC_ap^{k}(1-p)^{n-k} \) 

とする. これが二項分布というものであった. 

この分布にたいして

\( g(z)=(1-p+pz)^n \)

が対応するべき級数である. したがって, 二項分布の期待値は

\( E[x]= pn, Ver[x]= n(n-1)p^2+ pn -p^2n^2= pn(1-p) \)

で計算できる. 

 

特に, \( p=h/n \)とする. この時, 

\( g(z)= (1+ (z-1)h/n)^n \) 

でnを無限に飛ばすと, 

\( g(z)= exp( (z-1)h) =e^{-h} \sum_{n=0}^\infty \frac{h^nz^n}{n!} \)

が成立する.

このような二項分布の極限で与えられる確率分布

\( P( \{n\} )= e^{-h} \frac{h^n}{n!} \) 

 をPoisson分布とよぶ. Poisson分布の期待値, 分散は, いずれもhに一致する. 

Poison分布は, 交通事故の件数の分布などで用いられる. 

 

以上で見てきたのは離散分布であるが, 正規分布といった重要な分布は連続分布とばれる重要な分布のクラスに属する. 

 

確率空間\( (X, C_X), P ) \)を考え, その確率変数

\( x: (X, C_X) \rightarrow (\mathbb{R}, B ) \)

を考える. ここでBは, 直線の開集合の無限和と補集合をとることで得られる集合. 

この時xが分布 \( \mu=P^x \)に従うとして, これが直線上のルベーグ測度dxによる連続なRadon-Nikodym微分をもつとき, 分布を連続分布という. また

\( d\mu/dx =f \) 

を確率密度函数と呼ぶのである. 

 

すなわち, \( (a, b) \in B \)に対して

\( P^x( (a, b) )=\int_{a}^b P^{x}(m)=\int_a^b f(m)dx(m) \) 

として計算されるとき, fを分布の確率密度函数という. 

 

例えば, 正規分布やχ二乗分布などはこの例である. 

 

コルモゴロフ流の確率と分布

確率変数や分布, 期待値, 分散という概念を簡単に説明する. 
確率空間とは, 可測空間\( (X, C_X) \) とその上の測度 P のペア\( ( (X, C_X) , P) \)で, \( P(X)=1 \)となるようなもののことである. 
ここで、測度とは面積を測定する函数Pで, 可測空間は, ある測度で面積が測定するできるXの部分集合全体 \( C_X \) のこと. 
すなわち, \( \Omega \in C_X \) が生じる確率は
\( \int_{\Omega} dP(x) \)
と考える. 
 
例えば, 6つの目を持つサイコロをふるとき, 
\( X= \{ 1, 2, 3, 4, 5, 6 \} \)
で, \( C_X \)は\( X \)の部分集合全体の集合とし, 
\( P( \{1\} )=P( \{2\} )=\cdots=P( \{6\} )=\frac{1}{6} \)のような測度をいれた. このようなすべての事象が等しく生じるとする確率論はラプラス流というものであり, ここで説明する現代のコルモゴロフ流のそれより遥か昔に考えられた確率論である.  
 
確率変数, 分布について説明する. 
可測空間\( (M, C_M) \) を考える. この時, 
\( x: (X, C_X) \rightarrow (M, C_M )\)
を, 可測空間の間の射, すなわち \( x^{-1}(U) \in C_X \)がすべての \( U \in C_M \)で成立するような写像\( x : X\rightarrow M \)のこととして, 確率変数と呼ぶ. 
 
特に, 確率変数により次のようにして\( (M, C_M)  \) 上に測度\( P^x \)が誘導されるが, これが確率測度\( \mu \)と一致するとき, 確率変数 \( x \)は確率分布 \( \mu \)に従うという.  すなわち  
\( P^x(U):= P(x^{-1}(U))  \) , \( U\in C_M\)
として測度\( P^x \)を定義する. 
 
例えば, \( 2 \)回コインを投げる試行過程では, 表=1, 裏=0として
\( X= \{ (0, 0), (0,1), (1,0), (1, 1) \} \)
であり, ラプラス流の確率測度\( P \)が定まる. これに対し, 
\( x: X \rightarrow \{ 0, 1, 2 \} \)
を, Xの元に対し, その元の各成分を足す写像とする. 
この時, 
\( P^x( \{0 \} )= P^x (\{ 2\} )=\frac{1}{4}, P^x(\{ 1\}) =\frac{1}{2} \)
である. 
 
これは, 2回のコイントスでの表の出る回数に関する事象を示す確率分布をあたえており, 二項分布とよばれるものである. 
 
\( ((X, C_X), P)  \)を確率空間とする. これが 確率変数xとして\(  (\mathbb{R}, L)  \)という, ルベーグ可測集合(すなわち, 直線における通常の面積が定義できる集合) に分布を持つとする. 
r次の積率\( \alpha_r \)を次のように定義する. 
\( \alpha_r:= \int_{m\in X} x(m)^r  dP(m) \)
特に1次の積率のことを期待値E[x]と呼ぶのである. 
 
確率変数xを|x|に取り換えて, r次の積率を定義したときは, 絶対積率とよび, \( \beta_r \)と記述する. 
 
分散Ver[x]は, \( Ver[x]:=\alpha_2[x-E[x]]] \)として定義する. すなわち, 次が成立する.
\( Ver[x]=\int_{X} (x(m)-E[x])^2 dP^x(m)=E[x^2]-(\int_{X}x(m) dP^x(m)  )^2 =E[x^2]-E[x]^2\)
 
分布を特徴づける重要な函数である分布関数や, 特性函数について説明する. 
分布関数は, ルベーグ可測空間 \( ( \mathbb{R}, L ) \)に値をもつ確率変数xに対して
\( F(a) :=P^x ( (-\infty, a ) )=P( \{m \in X |  x(m) \in (-\infty, a) \} ) \)
で定義される単調増大函数である. 
 
これは, 分布\( \mu= P^x \)より定まるが, 逆に分布関数より分布が決定されることに注意する. 
 
特性函数は, 同様の状況で確率測度 \(P \)のフーリエ変換, すなわち
\( \phi_x(\xi):=E[e^{ix \xi}] =\int_{m\in X} e^{i\xi x(m)}dP(m) =\int_{a \in \mathbb{R} } e^{i \xi a} dP^x(a)\)
として定義される. 
 
このようにして定義される特性函数もまた, 分布により決定されるが, フーリエ逆変換の存在から, 逆に特性函数により分布が決定する.