ラングランズ対応

 

1 古典的な局所ラングランズ対応
F を剰余体の標数 p の p 進体として, 剰余体を k とする. この時, F の絶対ガロア群の 惰性群 IF とし, フロベニウス元 Fr としたときに Weil 群を
$$0−→IF −→W_F −→⟨Fr⟩−→0$$
が成立するようにとる.

(Weil 群の位相としては IF が \(W_F\)の開集合となるように入れる. )

また, \(d_F:W_F→\mathbb{Z} \)を, \(w=Fr^{d_F(w)}\)が成立するように定義し,

\(||w|| = q^{-d_F (w)}\)
でノルムを定義する.
Definition 1.1

G を局所副有限群として, G の既約表現 (π, V ) が滑らかとして, 各v ∈ V における安定化群が G において開集合であることとする.

 

初めに Weil-Deligne 表現を次で定義する.


Definition 1.2

F の C 上の Weil-Deligne 表現 (WD 表現) とは, Weil 群 WF の表現 (r, V) と \(N ∈End_C(V) \)で, 次の条件を満たすような (r,V,N) のペアのこととする.
1. 任意の w ∈ WF に対して,
\(r(w)Nr(w)^{-1 }= ||w||N\)


この N はモノドロミーと呼ぶが, これは多様体上のベクトル束の定める淡中基本群の表 現, つまりモノドロミー表現と対応がある. (N は, \(\mathbb{Q}_l \)係数表現で惰性群の生成元に対応 する元と考えられる. )

Remark 1.3

WD 表現 (r,V,N) がフロベニウス半単純であるとは, ある, フロベニウス 元のリフト \(w ∈ W_F\)に対して r(w) ∈ End(V ) が半単純であること


古典的な GLn 群の局所ラングランズ対応は次の集合としての 1:1 対応のこと.

Theorem 1.4
{GLnの C 係数smooth,irr,rep}/ ≃↔ {n dim WD Frobenius semisimple rep (r,V,N)}/ ≃

2 簡約代数群
ここでは, 簡約代数群の基本的な性質を確認する.
2.1 k=k
G/k で k が代数閉体の場合を考える. ここでは, 代数群を, k 上有限型の群スキームと
し, 特に G がアファイン k 上滑らかな代数群とする.
Definition 2.1

G が可解であるとは, Gi+1 が Gi の正規部分群スキームである列で,
G≥G1 ≥G2 ≥...≥Gn =1 , Gi/Gi+1 が可換であることとし, G が冪単とは, 更に,
$$G_i/G_{i+1}→ \mathbb{G}_a$$
が成立することとする.


以下では, R(G) で極大な可解かつ滑らかな連結正規部分群スキームであるとし, Ru(G) を極大な冪単かつ滑らかな連結正規部分群スキームのことした. (もちろん, 冪単ならば 可解なので Ru(G) ⊂ R(G) である, ) この R(G) = 1 の時, G を半単純といい, Ru(G) = 1 の時に簡約という. (半単純であれば, 簡約である)

Definition 2.2

G の部分集合に関して, 極大トーラス, ボレル, パラボリックを次のよ うにして定義する.
1. T ⊂ G で T がトーラスとなる極大部分群スキームを極大トーラスという.
2. B ⊂ G で連結かつ滑らかな半単純部分群スキームで極大なものをボレルという.
3. P ⊂ G で滑らかな部分群スキームで G/P が k 上固有なものをパラボリックとい う.
このパラボリック部分群に関して次が成立する


Proposition 2.3 (Springer 1998, 6,2,7)

P ⊂ G がボレルを含むことと, パラボリック
あることは同値.

2.2 general k


ここでは, k を代数閉体とは限らない一般の体で考える. G を k 上滑らかなアファイン 代数群とする.


Definition 2.4

G が半単純, 簡約であるとして, G を k に基底変換した時に半単純, 簡 約として定義する. また, H ⊂ G という部分群スキームに関して, 極大トーラス, ボレ ル, パラボリックを, k に基底変換した時にそのようになることとする.
次に分裂, 準分裂を次で定義する.
Definition 2.5

T が分裂とは, k 上で
$$T ≃ \mathbb{G}_m^n$$
となることとし, G が分裂として, G の極大トーラスが分裂することとする. また, G が
k 上定義されたボレルを含むときに, G を準分裂という.

Definition 2.6

P ⊂ G をパラボリック部分群として, L ⊂ P を
L ,→ P ↠ P / R u ( G ) が同型となるものとしてレヴィ部分群という.

パラボリック部分群はレヴィ部分群と冪単部分群に分解するが, これはリー群論でのレ ヴィ分解である. このレヴィ部分群に関して, 次が成立する.


Proposition 2.7 (Springer1998, 16.1.1)

P をパラボリックとして次が成立する. 1. レヴィ部分群が存在する.
2. 二つのレヴィ部分群 L1, L2 として, ある g ∈ P (k) が存在して,
L1 = Ad(g)L2
が成立する.
3. レヴィ部分群には, 極大な分裂部分トーラスが含まれる.
つまり, すべてのパラボリック部分群はレヴィ分解ができることが分かる.


Definition 2.8

ボレル B に関して, その極大部分トーラス T のペア (B, T ) のことをボ
レルペアという. また,
$$X_∗(T ) := Hom(\mathbb{G}_m, T/k^{sep} ), X^{∗}(T ) := Hom(T/k^{sep} , \mathbb{G}_m) $$
として定義する. 以下では, G を連結な, 分裂簡約代数群であるとする. この時, T を極大トーラスとすれば分裂する.

 

Definition 2.9
W(G,T) := NG(T)/T として T に対する G のワイル群を定義する.
すると, 共役を通じて, W (G, T ) は T に作用し, T はリー代数 g := Lie(G) に作用する. ここで, ルート系を定義する.
Definition 2.10

α ∈ X∗(T) がルートであるとは,
gα :={g∈g|tg=α(t)g,∀t∈T}
としたとき, α≠0, gα≠0 となるものとする. 

ルート全体を Φ とかく. また, コルートを次で定める.
Proposition 2.11 (Milne 2017, Thm 2,1,11)

α ∈ Φ に対して, ker(α) =: Tα として, Tα
の中心化群 Gα とする.
1. Gα は T を極大トーラスに含むような簡約代数群 2.
Lie(Gα)≃Lie(T)⊕gα ⊕g−α
で, dimgα = dimg−α = 1
3. W(G,T)≃S2
4. W (G, T ) の非自明な元 sα として, ある αV ∈ X∗ (G) が一意的に存在して,
sα(x) = x − ⟨x, αV ⟩α が任意の X∗(T) に対して成立する.
この αV をコルートといい, コルート全体を ΦV とする. この (X∗, Φ, X∗, ΦV ) の性質を 満たすような 4 つ組のことをルートデータとして, 以下で定義する.
Definition 2.12

ルートデータ (X, Φ, X V , ΦV ) とは, 有限生成アーベル群 X, X V れぞれの有限部分集合, Φ ⊂ X, ΦV ⊂ XV かつ
1. perfect pairing
⟨,⟩:X×XV −→Z
2. 全単射: Φ−→ΦV;α7→αV で次の性質を満たすものを持つことする.
で, そ
1. ∀α∈Φに対して,⟨α,αV⟩=2 2.Sα:X−→X,x7→x−⟨x,αV⟩αが,Sα(Φ)⊂Φを満たし,同様にSαV :XV −→
XV ;μ 7→ μ − ⟨α,μ⟩αV を定義した時に, SαV (ΦV ) ⊂ ΦV を満たす.

 

Remark 2.13

Sα, SαV は α, αV に直交する平面に関する折り返し
5

このルートデータが被約であるとは,
Q·α∩Φ = {±α}
が成立する事. 被約なルートデータと (G, T ) には対応がある.
Proposition 2.14

(G, T ) より構成される (X∗(T ), Φ, X∗(T ), ΦV ) は被約なルートデータ.
特に, SGA-XXI に従って基底付きルートデータを定義する.
Definition 2.15

∆ ⊂ Φ が基底であるとは,
Φ ,→ N · ∆ ∪ −N · ∆
, N · ∆ := {P
特に, この基底をとったとき, ∆ の元を単純ルートといい,
N·∆∩Φ =: Φ+
の元を正ルートという.


Remark 2.16

Φ+ を与えることと, 基底 ∆ を与えることは同値. 実際, Φ+ から
∆ = {α ∈ Φ+|α = α1 + α2,(α1,α2) ∈ Φ+ × Φ+というものは存在しない} として, ∆ が復元できる.
先に定義したルートデータに基底のデータを加えた, (X,Φ,XV ,ΦV ,∆)
のことを基底付きルートデータという.
Definition 2.17

基底付きルートデータ (X, Φ, XV , ΦV , ∆) の双対を, (XV , ΦV , X, Φ, ∆V )
で定義する. ここで, とした.
∆V :={αV ∈ΦV|α∈∆}

a∈∆
naa|na ≥ 0, ∀a}.

連結な分裂簡約代数群 G に対してルートデータが決まったが, G のボレルペア (B,T) に対して,
Φ+ := {α ∈ Φ|gα ⊂ Lie(B)}
を定義すれば, これより基底 ∆ ⊂ Φ が定まる. この基底付きルートデータを以下では
BR(G,B,T) として定義する. (この BR は Based Root.)

連結な分裂簡約代数群 G に関して, ピンニングを次で定義する.
Definition 2.19

G のピンニング (B,T,{Xα}α∈∆) とは, G のボレルペア (B,T) とそれ により定まる基底 ∆ に対して,
Xα ∈ gα − {0}
をとったペアのこととする.
この時, 次のような圏同値が存在する.

Theorem 2.20
{ピンニング付きの連結な分裂簡約代数群}/≃ ↔ {基底付きかつ被約なルートデータ}/≃ , (G,B,T,{Xα}) 7→ BR(G,B,T) は圏同値.


この記号の下に, Gk のパラボリック部分群と基底の部分集合には次の対応が存在する.

Theorem 2.21 (Milne, 2017, 25.2.3.3)

次の全単射が存在する.
{G(k)でのGのパラボリック部分群の共役類} −→ {∆の部分集合} , P → {α ∈ ∆|gα ̸⊂ Lie(Ru(P)}.


この定理から,G/k を連結な簡約代数群として(B,T),(B′,T′)をボレルペアとすれば,あ る g ∈ G(ksep)/T(ksep) が一意に取れて, Ad(g)(B,T) = (B′,T′) が成立する. これより, 定理 2.20から次の同型が存在することが分かる.
i(B,T),(B′,T′) : BR(Gksep,B,T) ≃ BR(Gksep,B′,T′). 

したがって, この同型を通じて Gksep のボレルペア (B,T) に関する BR(Gksep,B,T) の 順系が定まるので,
brd(G):= lim BR(Gksep,B,T) −→
(B,T)
が定まる. (based root datum.) ここで, Γk で k の絶対ガロア群としたときに, ∀σ ∈ Γk
に対して,

σ : BR(Gksep,B.T) −→ BR(Gksep,Bσ,Tσ)

が各ボレルペア (B,T) に対して定 まるのでこれから Γk は brd(G) に作用することが分かる. この Γk ↷ brd(G) について 考える場合, 次の議論で G を準分裂と仮定してよいことが分かる.


Definition 2.22

G, G′ を k 上の連結簡約代数群で, G′ が G の内部形式であるとは, あ ′
る ψ : Gksep ≃ Gksep が存在して, ∀σ ∈ Γk に対して, ψ−1σ(ψ)
が内部自己同型であることとする. ここで, id⊗σ−1◦ψ◦id⊗σ=:σ(ψ):Gksep −→G′ksep
とした.
上記の ψ のことを内部ひねり (inner-twist) という. この内部ひねり ψ は Γk 不変な同型
brd(G) ≃ brd(G′ )


Proposition 2.23

任意の連結簡約代数群 G に対して準分裂な G の内部形式 G′ が存
を誘導する. 在する.
これより, 確かに Γk ↷ brd(G) を考えるときは, G が k 上準分裂としてよい. 3 局所ラングランズ対応
ここでは, F を p 進局所体として, C を標数 0 の代数閉体とする. G を F 上の連結な簡 約代数群とし, これに関して C 上の連結簡約代数群 Gb で, あるボレルペア (B,T) に対 して,
BR(Gb, B, T ) ≃ brd(G)V 

となるものの存在が知られる. すると, Weil 群 WF の Gb への標準的な作用が次のように して定まる. 定義と定理 2.20から,
WF ⊂Aut(brd(G)V)≃Aut(BR(Gb,B,T))≃Aut(Gb,B,T,{Xα}α∈∆)⊂Aut(Gb)
がピンニング {Xα} に対して成立するので, これによって WF ↷ Gb を定める. ここで, Gb というのは一意ではないので, 普遍的な Gb を構成する. (Gb, B, T ) と同様の性質を満たす, ほかの (Gb′,B′,T′) に関して,
BR(Gb′,B′,T′) ≃ brd(G)V ≃ BR(Gb,B,T) があるので, 定理 2.20より, ピンニングをそれぞれ固定することで
ιGb,Gb′ : (Gb,B,T,{Xα}) ≃ (Gb′,B′,T′,{Xα′ }) が誘導される. これより定まる順系の極限
lim Gb b −→
(G,B,T,{Xα})
を改めて, Gb と書くことにする. これは C 上の代数群であり, これに対して G の L-群を
LG := Gb(C) ⋊ WF
で定義する.
Remark 3.1

G′ を G の内部形式とすると, 内部ひねりによって L 群の同型
LG ≃L G′
が誘導される. 特に, G の L 群を考える場合は G を準分裂としてよい.
G の L 群に関するパラボリック部分群を定義する. Definition 3.2

P ⊂L G がパラボリックとは,
1. P −→L G −→ WF という標準的な射が全射. 2. P ∩ Gb(C) が Gb においてパラボリック部分群.

を満たす部分代数群のこと. このパラボリック部分群の重要な性質としてレレヴァントを定義する.(relevant.) その為
に一つ補題を用意する.
Lemma 3.3

P ⊂L G をパラボリックとして, P ∩ Gb の共役類は WF 作用で安定.
proof まず, 定義から任意の w ∈ WF に対して, P への持ち上げ (g, w) ∈ P が存在す る. そこで,
なので,
が成立し, 示された.
すると,
Ad(g, w) · (P ∩ Gb) = P ∩ Gb w · P ∩ Gb = Ad(g−1)P ∩ Gb
BR(Gb,B,T) ≃ brd(G)V = lim (XV ,ΦV ,X,Φ,∆V ) −→
(B,T)
より, 定理 2.21から, G のボレルペア (B, T ) により定まる基底の双対 ∆V
の WF 安定な 部分集合が対応することが分かる. (このボレルペアは Gb の P ∩ Gb が定めるボレルペア
に対応するものを考える. )
ここで, 更に ∆ −→ ∆V という標準的な全単射を通じて WF 安定な ∆ の部分集合が
定まるが, これに関して再び定理 2.21を用いることで, WF 安定な G のパラボリック部 分群の共役類が対応する.
Definition 3.4

上記のように, P ⊂L G というパラボリック部分群に対応する, G のパ ラボリック共役類で WF 不変なものが, F 上で定義されたものを含むとき, P をレレヴ ァント (relevant) であるという.
Remark 3.5

G/F が準分裂であれば, L G の任意のパラボリック部分群がレレヴァント となる.
次に L 群のレヴィ部分群を定義する.
Definition 3.6

P ⊂L G をパラボリックとして, P ∩ Gb のレヴィ部分群 L をとった時,
L の P における正規化群 NP (L) を LG のレヴィ部分群という. 

次に, L 群の半単純性を次で定義する.
Definition 3.8

g ∈L G が半単純とは, 次が成立する事. F′/F を WF′ = ker(WF −→ Aut(Gb) として, g ∈ Gb ⋊ Gal(F ′ /F ) ,→ GLN が半単純. (十分大きな N に対する GLN に埋め込む)
さて, 以上の準備の下, Weil-Deligne 表現を一般化した L パラメータを定義し, 局所ラン グランズ予想を考える.
Definition 3.9

連結な簡約代数群 G/F に関する C 上の Weil-Deligne L パラメータは (ρ,N) という, ρ ∈ Hom(WF,L G), N ∈ Lie(Gb) の次を満たすようなペアのこととする.
ρLρLb
1. WF −→ G−→WF は id であり, WF −→ G−→G(C) は局所定数写像.
2. ∀w ∈ WF に対して, が成立し, ρ(w) は半単純.
Ad(ρ(w))(N) = ||w||N
3. NP(L) ⊂ P ⊂L (G) をパラボリック部分群 P とそのレヴィ部分群とする. I m(ρ) ⊂ NP (L), N ∈ Lie(L) が成立すれば, P はレレヴァントである.
この L パラメータを用いることで, 局所ラングランズ予想を次のようにする. 以下, q は F の整数環の剰余位数とする.
Conjecture 3.10

c ∈ C を c2 = q としたとき,
LL : {irr sm rep of G(F) over C}/≃ ↠ {Weil Deligne L−Parameter over C for G}/Gb−共役 が取れて, 各ファイバーは有限

関数体の数論

 

2023年度の八王子数論セミナーのノートをまとめる.(以下は初日と二日目の分)

最初は, \(A:=\mathbb{F}_q[t], K:=\mathbb{F}_q(t) , \mathbb{C}_\infty:="\overline{\mathbb{F}_q⦅1/t⦆}の(1/t)進完備化"\)としたとき, \(e_n(x):=\prod_{f \in A(d)}(x-f)\)というものを考えるところから始まった.

ここで, \(A_n(d)\)は次数がd未満の多項式全体の集合とした.

これは, 後々Carlitz exponentialとうまく対応してくるものである.

Moore discriminantの性質から,

$$ e_(x)=\Delta(1,t,\ldots,t^{n-1},x)/\Delta(1,t,\ldots,t^{n-1})=\sum_{k=0}^{n}(-1)^{n-k}\frac{D_n}{D_kL_{n-k}^{q^i}}x^{q^i} $$

ここで,

$$ [k]:=x^{q^n}-x, D_n:=\prod_{k=1}^n [k]^{q^{n-k}}, L_n:=\prod_k [k] $$

として定義した. この\(e_n(x)\)の代わりに,

$$\tilde{e}_n(x)=x\prod_{f \in A(n)-\{0\}} (1-x/f)=\sum_{k}(-1)^k\frac{L_n}{D_kL_{n-k}^{q^k}}x^k$$

を考えるが, この係数\(L_n/L_{k}^{q^{n-k}}\)の記述に関して,

$$L_n/[1]^{(q^{n}-1)/(q-1)}\times {[1]^{q^{n-k}-1/(q-1)}/L_{n-k}}^{q^k}\times [1]^{q^{k}-1/(q-1)}$$

と書け, \(L_d/[1]^{(q^d-1)/(q-1)}=\prod_{k=0}^{d-1} (1-[k+1]/[k])\) であり, これがprincipal unitとなる.

そこで\(d \rightarrow \infty\)を考えることができるが, この極限を\(s\)ととれることを踏まえて, 計算をすることで以下がわかる.

$$ \tilde{e}_C(x):=\lim_n \tilde{e}_n(x)= 1/s \sum_{k} (-1)^{k}[1]^{(q^{k}-1)/(q-1)}\frac{(sx)^k}{D_{k}x^{q^{k}}} $$

これはCarlitz exponential

$$e_C(x):=\sum_k x^{q^k}/D_k$$

を用いることで, 次のような関係式が満たされることがわかる.

$$\tilde{e}_C(x)/x=e_C(\tilde{\pi}x)/\tilde{\pi}x$$

この, \(\tilde{\pi}\)というのはCarlitz周期と呼ばれるものであり,

$$\tilde{\pi}=s(-[1])^{1/(q-1)}$$

として定義される. これによって,

$$e_C(x)=x\prod_{0\neq l\in \tilde{\pi}A}(1-x/l)$$

という無限積表示が得られることがわかる. また, ここで得られた公式,

$$\tilde{e}_C(x)/x=e_C(x)/x$$

の辺々に対数微分\(z(d/dz)\)をとることで, Carlitz zeta

$$\zeta_C(k):=\sum_{f:monic \in A}1/f^k$$

に関するEular関係式が得られる.

次に, Carlitz加群の構成を行おう.

簡単な計算によって, 任意の\(a\)に対して, ある\( C_a \in K\{τ\} \)が取れて, (τはq冪のオペレーターで、K{τ}でK係数のオペレーターのなす非可換環とした.) 

$$e_C(ax)=C_a(e_C(x))$$

が成立する. 特に\(a=t\)では簡単で以下のように書ける.

$$ C_{t}=t+τ$$

ここで, できる\(A \hookrightarrow K\{τ\}\) という \(\mathbb{F}_q\)-lin をCarlitz加群といい, これによって, 自然に\(\mathbb{C}_\infty\)に\(A\)加群の構造が入る.

このようにして, あたかもリー代数とリー群を\(exp_{G}\)がつないでいるように, \(A\)と\(\mathbb{C}_\infty\)を\(e_C\)がつないでいるのである. 無限積の表示から, \(e_C\)は\(\tilde{\pi}A\)に関して周期的であるので, Carlitz加群の等分点として

$$C_{tors}:=\{e_C(f\tilde{\pi})|f \in K\}$$

で考える. 感動的なのは, \( K \)の任意の代数拡大\(L\)に対して, \(L(C_{tors})/L\)がアーベル拡大であることである. また, \(C_a(τ)=\sum_{k=0}^dC_a^{(k)}(τ)^{k}\)としたとき, \(C_a^{(k)}\)に関する漸化式が $$C_aC_t=C_tC_a$$ という関係式から導出される. 次に, \(e_C\)の逆に関して, 形式的に構成することができ, これをCarlitz logarithm という. (この係数は\(e_C(tx)=te_C(x)+e_C(x)^{q}\)から一意に定まる. ) 形式的に計算することにより, $$log_C(x):=\sum_{k}(-1)^kx^{q^k}/L_k$$ とわかる. この収束半径は, $$-\frac{1}{q-1}$$ と計算できる. このようにして, \(e_C,log_C\)が定義できたので, \( x^a=e_C(a\log_C(x)) \)のようなものを考えることができる.

(定義)

\(E_j(z)\)という\(\mathbb{C}_\infty \rightarrow \mathbb{C}_\infty\)を $$e_C(z\log_C(x))=\sum_{k=0}E_k(z)x^{q^k}$$ によって定義する.

この\(E_j\)というのは, 簡単な計算から\(r^j\)次の\(z\)に関する多項式であり, \(F_q\)線形である. さらに, \(z=a \in A\)を代入すれば $$E_j(a)=C_a^{(j)}$$ であることがわかる. ここで, \(E_j(z)\)に関する著しい性質として, $$E_j(z)=e_j(z)/D_j$$ が成り立つことである. (辺々の零点と, \(z=t^{q^j}\)を代入したものをみればわかる. )

 

(3日目)
    今日は, Drinfeld加群の性質やt-moduleに入った. 
    \( \iota:A \rightarrow L\)
    という\(F_q\)上の体Lへの準同型を固定する. (LはA-fieldという. \(\iota(t):=\theta \)とする. )
    定義

        \(d\ge 1\)として, d次元t-module とは\(F_q\)代数の準同型で

        $$\Phi: A \rightarrow M_d(L{τ}) $$

        であり, 

        $$ \Phi(t)=(\theta I_d+N)τ^{0}+(higher terms) $$

        となるもの. ここでNは冪零であるとした. 
        以下, 
        $$\partial \Phi:=\theta I_d+N$$
        とする. 
    
    このd=1の場合をDrinfeld加群という. 
    これにより, \(L^d\)はA加群として考えられる. 
    これは, Carlitz加群の自然な拡張を与えているが, 問題は, 一意化が存在するかどうかである. 
    しかし, \(L=C_\infty\)の時にはExpの存在は知られている. 
    つまり, 次のことが知られている. 
(命題)    

     $$Exp_\Phi:C_\infty^d \rightarrow C_\infty^d$$

        という\(F_q\)線形な, \(M_d(C_\infty)\)係数のべき級数がとれ, 
        \(\partial \Phi(a)\)倍が\(Exp_{\Phi}\)を介して\(\Phi(a)\)倍を誘導する. 
    
    この\(Exp_{\Phi}\)の核は有限生成かつ離散な\(\partial \Phi(A)\)加群であり, そのランクを\((\Phi,C_\infty^d)\)のランクという.

また, \(Exp_{\Phi}\)が全射であるときに一意化可能であるという. 
    (Drinfeld加群では常に一意化可能であることが知られる. )
    このt-moduleのmotiveのようなものとして生じるのがt-motiveである. 
    (定義)
        \(L\{τ\}[t]\)加群で, \(L\{τ\}\)加群として有限生成かつ自由であるものMが, t-motiveであるとは, 
        $$(t-\theta)^lM ⊂σH$$
    以下では, この\(L=C_\infty\)の場合を考えていく. 
    特に, アーベル多様体の一意化の類似を考えるために, t-motiveがabelianであることを, 
    L[t]加群として階数有限な有限生成自由加群となることと定義し, r(M)でその階数として定義する. 
    トーラスがアーベル多様体になるには, Rieman計量が存在することが必要であったが, このabelian t-motiveに対しても同様のことが知られている. 
    アーベルなt-motive \(M\)に対して, 
    Mの\(C_\infty[t]\)加群の基底をMとし, 
    この基底に関するτの表現行列\(\Theta\)とする. 
    この時, アーベルt-motiveがRigid analytically trivial であるとして, 
    $$\gamma=\gamma^{(1)}\Theta$$
    がある, \(\gamma \in GL_{r(M)}(C_\infty<t>)\)に対して成立することとする. 
    \(\gamma\)をRigid analytic trivializationという. 
    Andersonは, Rigid analytic trivialなt-motiveに付随するt-moduleは一意化可能であることと同値であることを示した. 
   
    次にdual t-motiveについて進んだ. 
    \(L/F_q\)を完全体として, 

    $$σ: x\mapsto x^{1/q}$$

    というオペレーターを考える. 
    これに関して,
    $$*: L\{τ\}[t]\simeq L\{σ\}[t]; \sum c_nτ^n\mapsto \sum c_n^{(-n)}σ^n$$
    というdualな同型がある. 
    dual t-motiveもt-motiveと同様にして定義することができる. 
  

(定義)
    左\(L\{σ\}[t]\)加群Hで, \(L\{σ\}\)加群として階数有限な自由加群で, 
    $$(t-\theta)^n ⊂σH$$
    が十分大きなnに対して成立する時に, Hをt-motiveという. 
  
    t-motiveのアーベルである条件に対応するものが, 
    A-finiteというものであり, 次のようにして定義する. 


    (定義)
        Hがdual t-motiveとして, これがA-finiteであるとは, 
        Hが\(L[t]\)加群として階数有限で有限生成であり, 自由であることとする. 
    このdual t-motiveを考える理由として, 先に見たt-moduleとt-motiveの間のanti-equivな圏同値が
    圏同値となることである. 
    以下で, それを見る. 
    まず, *の拡張を次のようにする.

    $$*:M_{m\times n}(L\{τ\}) \mapsto M_{m\times n}(L\{σ\}); (M_{i,j})\mapsto (M_{i,j})^{*}:=(M_{j,i}^{*})$$

    この時, Dual t-module \(\Phi, \mathbb{G}_a^n)\)に対して, 

    $$H(\Phi):=Mat_{1\times n}(L\{σ\})$$

    \(L{σ}[t]\)加群としての, この\(H(\Phi)\)の構造は
    \(ct^n\)で\(c\in L{σ}\)に対しては, そのまま合成して, \(t^n\)の部分は\(\Phi(t^n)^{*}\)で引き戻しをすることで作用を定義できる. 
    これが圏同値を与えている. 
    このdual t-motiveの世界でのRigid analytic trivializationについて考える. 
    dual t-motive HがA-finiteであるとして, hを\(L[t]\)-basisとする. 
    この時, \(σ\)の表現行列行列\(\Phi\)が取れて, 
    $$\Psi^{(-1)}=\Phi \Psi$$
    となる, \(\Psi \in GL_{r}(C_\infty<t>)\)が存在する時, \(\Psi\)をRigid analytic trivializationという. 

(このRigidは淡中圏としてのRigid.)